心臓の形態に関する論文がアクセプトされました
名古屋大学 腎臓内科 客員研究員としての研究活動を続けておりますが、新たに論文がアクセプトされましたのでご報告させていただきます。
論文のタイトルは「Impact of left ventricular geometry on all-cause mortality in patients undergoing hemodialysis: A longitudinal observational study」で、Kidney360という英文誌にアクセプトいただきました。
以下が、メインの結果になります。
「Concentric hypertrophy(30%)が最も多く、次にConcentric Remodeling (27%)が多く、それらは総死亡のリスクである」という結果が得られました。
本研究の背景ですが、左室形態は上の図のようにLeft ventricular mass index (LVMI)とRelative wall thickness(RWT)により、4つに分類できることが知られています。LVMIは左室心筋重量係数のことで、これが基準値より高いと左室肥大と定義されます。
RWTは、拡張期左心室内径/左室後壁 ✖️2で計算できますが、すなわちこれが基準値より高いと、相対的に左室壁が分厚い、左室内腔が狭いと言うことになります。
この分類を用いて、LVMIとRWTがいずれも低いのものをnormal、LVMIが低くRWTが高いものをconcentric remodeling、LVMIが高い、すなわち左室肥大でかつRWTが低いものをEccentric hypertrophy、左室肥大でかつRWTが高いものをConcentric hypertrophyと分類します。
今まで、高血圧の患者さんや慢性腎臓病の患者さんにおいてはnormalと比較して、concentric remodeling、Eccentric hypertrophy、Concentric hypertrophyはいずれも死亡リスクが高いことが報告されてきました。
この分類方法の良いところは、従来の左室肥大の有無のみによる左室形態の分類では同定できない、concentric remodelingの患者を同定し、リスク層別化ができると言う点になりますが、透析患者さんにおいては報告がないのが現状でした。
そこで、今回我々は2000例以上の心エコーを実施した血液透析患者さんのデータを解析し以下を明らかにしました。
・Concentric hypertrophy(30%)が最も多く、次にConcentric Remodeling (27%)が多い。一方で左室形態が正常(Normal geometry)の患者さんはたったの21%である。
・Normal geometryと比べて、Concentric hypertrophy(HR1.32)とConcentric Remodeling (HR1.27)が多く、それらは総死亡のリスクである。
この結果より、血液透析患者さんにおいて心エコーを実施し左室形態を4つに分類することがリスク層別化に有用と考えます。今後の実臨床への応用が期待されます。
当院は血液透析患者さんの診療は行なっておりませんが、その前段階である慢性腎臓病の患者さんの診療に力を入れています。超音波検査士(循環器領域)・循環器専門医が在籍し、心臓の超音波検査を実施することによりこの左室形態を評価し患者さんの診療に活かしています。
また慢性腎臓病の領域を中心に、現在も複数の研究を大学院生の先生と進めています。今後も日々勉強し、診療で得られた知見を学会発表・論文などさまざまな形で発信することで、地域の皆様や医療の進歩に貢献していきたいと考えています。
文責:中村嘉宏(腎臓内科専門医、指導医、評議員)
