脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症とは
血液中の、簡便に測定できる脂質としてLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリドがありますが、これらのいずれかが基準値から外れている状態を、「脂質異常症」と呼びます。
脂質異常症では、「動脈硬化」を起こしてしまうことが問題になります。これは、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが血管の壁に沈着してしまうことによります。
脂質異常症 診断基準
採血で、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールが140mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満、トリグリセリドが175mg/dL以上(空腹時なら150mg/dL以上)で脂質異常症と診断します。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022より引用
脂質異常症 原因
脂質異常症は、遺伝などによる「原発性」と、生活習慣病などによる「二次性」に分類されます。
原発性脂質異常症
原発性脂質異常症は主に遺伝的要因によりますが、食事などの生活習慣がそこに加わり脂質異常が起きることもあります。
「家族性複合型高脂血症」が最も多く約100人に1人、次に「家族性高コレステロール血症」が多く約500人に1人と言われています。
原発性脂質異常症の多くの患者さんが、的確に診断されていないことが知られています。家族でコレステロールが高い人がいて、若年で高脂血症が指摘された場合や、後述する「家族性高コレステロール血症」の症状が見られる場合には特に疑うことが重要です。
二次性脂質異常症
肥満、糖尿病、飲酒、甲状腺機能低下症、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群など原因は多岐に渡ります。
脂質異常症と診断された場合には、これらの疾患が原因かどうかを、問診、血液検査、尿検査などで確認します。
脂質異常症 症状
脂質異常症には自覚症状がほとんどありません。しかしながら、長期間異常を放置してしまうと全身の動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を起こしてしまうことがあります。
トリグリセリドが500mg/dL以上になると、膵炎のリスクが高くなると言われており、その場合は激烈な腹痛を自覚することがあります。
原発性脂質異常症の中の「家族性高コレステロール血症」ではアキレス腱の肥厚、結節性黄色腫という皮膚への脂質の沈着、角膜輪という眼への脂質の沈着が特徴的です。
脂質異常症 治療目標
脂質異常症を治療する主な理由は、動脈硬化による重篤な病気(心筋梗塞や脳梗塞)の発症を予防することです。脂質異常症と診断された場合には、合併している病気など個別の患者さんの状態を確認した上で脂質の治療目標値を設定します。
治療目標値を決めるための具体的な流れですが、まず心臓病(冠動脈疾患)や脳梗塞を発症したことがあるかどうかを確認します。それらがあれば、「二次予防」としてより厳格な治療が必要になります。
心臓病や脳梗塞がなければ一次予防となり、リスクに沿って脂質の管理目標を設定します。
リスクの評価として糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患を確認します。これらのどれかがあれば、「高リスク」と判断します。いずれもなければ、リスクの点数をつけていきます。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022より引用
具体的には、以下に沿って点数をつけてきます。この点数を上の表に照らし合わせて、「低リスク」「中リスク」「高リスク」のいずれかに決定されます。
「二次予防」、もしくは「低リスク」「中リスク」「高リスク」のいずれかに決定されれば、以下の形で治療の目標値が設定されます。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022より引用
脂質異常症 治療
一次予防の場合には、まず基本は生活習慣の見直し、食事療法が基本になります。それを行なった上で、3-6ヶ月間経っても改善が見られない場合には薬での治療を開始します。
二次予防でも同様に生活習慣の改善が基本になりますが、それと同時により早期から薬物治療を開始した方が良いと考えられています。
生活習慣の改善
脂質異常症の治療の基本は生活習慣の改善で、食事管理と運動が基本になります。
また、喫煙している場合には禁煙が必要です。
肥満(BMI25以上)の場合には、その時点の体重から3%以上の減量を行うことが有用と考えられています。
食事で気をつけること(食事療法)
具体的には、以下が推奨されています。
・過食を抑え、標準体重を維持する
・肉の脂身、動物脂(牛脂、ラード、バター)、乳製品、卵類の摂取を抑え、魚、大豆の摂取を増やす。
・野菜、海藻、きのこの摂取を増やす。果物やナッツ類を適度に摂取する。
・食塩を多く含む食品の摂取を控える(6g/日未満)
・アルコールの過剰摂取を控える(25g/日未満)
運動療法
有酸素運動を中心に、一日合計30分以上、週3回以上(出来れば毎日)、もしくは週に150分以上実施することが勧められています。
有酸素運動具体的な内容としては、ウォーキング、水泳、軽いジョギング、サイクリングなどが勧めらています。
また、できるだけ座っている時間を減らすことも有用と考えられています。
脂質異常症 薬物治療
スタチン(LDLコレステロールの合成を抑える)、エゼチミブ(腸管からのコレステロールの吸収を抑える)、フィブラート系薬剤(主にトリグリセリドの合成を抑制)などの薬剤種類から、個々の状態に応じて選択していきます。
まず「スタチン」が使用されることが多いですが、副作用として肝障害や横紋筋融解症が知られています。そのため、定期的に採血で肝臓、筋肉の検査を行うことが勧められています。また、内服中に筋肉痛の症状が出た際には医療機関に相談をしてください。
いかがでしたでしょうか。名古屋で脂質異常症での外来受診をお考えであれば、金山駅前の当院への受診をご検討ください。
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(総合内科専門医)