メニュー

バセドウ病

バセドウ病とは

バセドウ病は自己免疫疾患の一つで、甲状腺を刺激する高値あが作られることにより「甲状腺ホルモン」が過剰に産生される病気です。

「甲状腺ホルモン」が過剰に産生してしまう状態を「甲状腺機能亢進症」と呼びますが、バセドウ病は甲状腺機能亢進症の中で60-0%程度を占める、最も頻度が多い疾患です。

20~40歳台の女性で発症することが多く、男性の1:3~10倍の罹患頻度であると言われております。

人口1000人あたり3人以下と考えられており、比較的稀な病気です。

バセドウ病 原因

上述のように、バセドウ病は「自己免疫疾患」の一つです。自己免疫疾患とは、免疫機能が誤って自分の体を攻撃してしまう疾患です。バセドウ病では、この自己免疫の異常が甲状腺で起きています。

バセドウ病になってしまう理由としては「遺伝」と「環境要因」が主な原因と考えられています。

バセドウ病 遺伝

血のつながったご家族にバセドウ病の方がいる場合には、バセドウ病に20-40倍程度なりやすいことがわかっています。ただし、ご家族にいるからと言って必ずしも罹患してしまうわけではなく、「バセドウ病になりやすい体質の人」が以下の環境要因を起こすことで発症しやすくなると考えられています。

環境要因

ウイルス感染、出産、過度なストレス、喫煙などが要因と考えられていますが、不明な点が多いです。

バセドウ病 症状

初期症状として典型的には以下のような症状があります。

動悸(胸がドキドキする)
多汗(汗をかく)
手指振戦(手指の震え)
体重減少

 

その他にも、以下の症状が見られることがあります。

眼球突出(眼が前方に押し出された状態)
月経不順
腹痛、下痢
首の腫れ

首にある甲状腺が腫れてくることにより「首の腫れ」を自覚することがあります。

以下の図のように、甲状腺はのどぼとけの少し下に位置します。

あすか製薬株式会社より引用

バセドウ病 合併症

心房細動

不整脈の一つである「心房細動」を合併しやすいです。主な症状は動悸で、「胸がドキドキする」「脈が飛ぶ」というような症状の場合に疑い検査を行います。

骨粗鬆症

バセドウ病では骨粗鬆症になりやすいことが知られており、定期的に骨密度検査を実施することが検討されます。

甲状腺中毒症性周期性四肢麻痺

バセドウ病の患者さんは過食や飲酒の後に、一時的に「低カリウム血症」となり四肢が麻痺してしまうことがあります。

甲状腺クリーゼ

バセドウ病では薬剤を自己中断してしまった場合などに高度な「甲状腺機能亢進症」の状態になり、意識状態が悪い、高熱、脈が早いなどの症状が見られることがあります。命に関わることがあるため、入院での治療が必要になります。

バセドウ病 診断基準

甲状腺疾患診断ガイドライン2021には、以下のように記載されています。

以下のa) の1つ以上に加えて、b) の4つを有するものは、バセドウ病の確定診断

a) の1つ以上に加えて、b) の1、2、3を有するものは、バセドウ病として確からしい

a) の1つ以上に加えて、b) の1が3月以上持続し、2を有するものは、バセドウ病が疑われる

a) 臨床所見

  1. 頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加などの「甲状腺機能亢進症」の症状を有する
  2. びまん性に甲状腺が腫大している
  3. 眼球突出または特有の眼症状を認める

b) 検査所見

  1. 甲状腺ホルモンであるFT4かFT3が高値
  2. TSH低値
  3. 抗TSH受容体抗体(TRAb)陽性、または甲状腺刺激抗体(TSAb)陽性
  4. 放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性

バセドウ病 検査

採血

甲状腺機能検査

甲状腺ホルモンであるFT3、FT4と、甲状腺刺激ホルモンである TSHを検査します。

バセドウ病による「甲状腺機能亢進症では」TSHが低値、FT3、FTを示します。

甲状腺の抗体検査

上述の診断基準にも含まれている「抗TSH受容体抗体(TRAb)」と「甲状腺刺激抗体(TSAb)」を検査します。

甲状腺超音波検査

甲状腺の超音波検査で「びまん性甲状腺腫大」「甲状腺内の血流の増加」などの所見を確認します。

バセドウ病 治療

バセドウ病の治療法としては薬物療法、アイソトープ治療、甲状腺切除術があります。

約9割の患者さんで、まずは薬物療法での治療が開始されています。

薬物療法

まず「メルカゾール」の内服から開始することが一般的です。FT4の値に応じて薬剤の量を調整します。

妊娠希望者、授乳中の患者さんでは「プロパジール」を選択します。

また、状態に応じて「ヨウ化カリウム」を使用します。

アイソトープ治療

甲状腺の中にアイソトープを取り込むことにより、甲状腺ホルモンの産生を抑える治療法です。確実な効果が得られる一方、「実施できる医療機関が限られている」「小児や妊婦・授乳婦では行えない」などの欠点があります。

甲状腺切除術

手術により甲状腺を手術するという治療法です。確実な効果が得られる一方、「入院が必要になる」「手術の痕が残る」「手術のリスクがある」などの欠点があります。

 

参考文献:甲状腺疾患診断ガイドライン2021、バセドウ病治療ガイドライン2019、日本内分泌学会

この記事の執筆担当者:中村嘉宏(総合内科専門医)

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME