肺気腫(COPD)
肺気腫とは
肺気腫は別名で「慢性閉塞性肺疾患 (COPD)」といい、主にタバコ(喫煙)の影響で徐々に破壊されてしまう病気です。
肺が破壊されることにより「気流制限」が起こり、息を吐きづらくなるため呼吸が苦しくなります。
40歳以上の喫煙者に多く約9割の方はタバコが原因で、タバコの量が多ければ多いほど肺気腫になる危険性が上昇することが知られています。
日本人の8.6%がCOPDを有していると考えられており、40歳以上では約530万人がCOPDであると考えられています。
肺気腫(COPD) 原因
タバコによる肺の炎症が主な原因で、COPDの患者さんの約90%で喫煙歴があると言われています。また、喫煙の量が多ければ多いほどCOPDになりやすいことが知られています。
そのほかにも大気汚染、粉じん吸入、化学物質、喘息なども肺気腫の原因になると考えられています。
肺気腫(COPD) 症状
肺気腫 初期症状
典型的な初期症状として労作時の息切れ。慢性の咳や痰があります。
呼吸困難の程度を評価するために、以下の質問票が用いられます。
mMRC質問表
グレード0:激しい運動をした時だけ息切れがある。
グレード1:平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩く時に息切れがある。
グレード2:息切れがあるので、同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時、息継ぎのために立ち止まることがある。
グレード3:平坦な道を約100m、あるいは数分歩くと息継ぎのために立ち止まる。
グレード4:息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをする時にも息切れがある。
その他の症状
進行すると、「体重が減る」「食欲が落ちる」「筋力が落ちた」という症状が出る場合があります。
また、激しい咳のために肋骨を骨折してしまうこともありその場合には胸部の痛みを自覚します。
上記のように、COPDは肺以外でも様々な症状を起こします。そのため、以下の質問票を用いて全身の状態を把握します。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕より引用
肺気腫(COPD) 検査
COPDが疑われる患者さんでは、下記などの検査などを組み合わせて診断します。
胸部レントゲン
胸部CT
肺気腫で認められる「気腫性の病変」を確認するとともに、肺気腫以外の疾患がないかどうかを確認するのにも有用な検査です。
呼吸機能検査
COPDの診断や、病気の進行度(病気分類)を確認するために実施されます。
COPD 診断基準
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022では、以下を満たす場合にCOPDと診断することが推奨されています。喘息などの「他の肺疾患ではないこと」を確認することが重要です。
・長期に喫煙歴などの曝露がある
・気管支拡張薬を吸入した後の呼吸機能検査で「FEV₁/FVCが70%未満」であること
・他の気流閉塞を起こす疾患ではないことを確認すること
COPD 合併症
COPDは、肺に炎症が起きると同時に全身に炎症が起きる病気です。そのため、肺以外にも様々な合併症を起こします。
肺合併症
喘息
肺がん
気胸
肺以外の合併症
睡眠時無呼吸症候群
睡眠に関連した症状が見られる場合には、睡眠検査を実施します。
高血圧
糖尿病
メタボリックシンドローム
骨粗鬆症
心血管疾患
胃潰瘍
栄養障害
COPD 急性増悪
COPDの急性増悪とは、「息切れの増加」「咳や痰の増加」などが急に起こり、治療の変更が必要となる状態です。
感染症が原因のことが多く、重度の場合には命に関わることもあるため入院での治療が必要になります。
肺気腫(COPD) 治療
COPDの治療の目標は、症状や生活の質の改善、身体活動どの維持や向上に加えて、将来のCOPDの進行抑制や、COPDNGを予防することなど多岐に渡ります。
禁煙
全てのCOPDの患者さんにおいて、禁煙を行うべきです。それによりCOPDの進行を遅らせることができることや、健康寿命を伸ばすことができることが分かっています。
吸入薬
薬物利用法の中心は「気管支拡張薬」と言われる気管支を広げる吸入薬になります。
患者さんの状態に応じて、以下の種類の吸入薬を組み合わせて治療を行います。
短期作用性、長期作用性抗コリン薬
短時間作用性、長期作用性β₂刺激薬
吸入ステロイド薬
リハビリ
COPDの患者さんはリハビリをすることで息苦しさが軽減するなど様々な効果が得られることがわかっており、身体活動レベルを高めることが重要です。身体活動性が維持できることにより、健康寿命を伸ばすことが期待できます。
酸素投与
COPDが重症になるとご自身の肺の機能だけで息苦しさが取れず、持続的に酸素ボンベを携帯して酸素を吸入し続ける必要が出てくる場合があります。
参考文献:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(総合内科専門医)