関節リウマチ
関節リウマチとは
関節リウマチは、関節に炎症が起きて痛み、腫れが出る病気です。関節の炎症が持続すると、関節の変形を起こしてしまいます。
20〜50歳代の女性に多い(男女比 1:4)病気ですが、若年や高齢でも発症します。
以前は関節が高度に変形してしまう人も多かったですが、検査や治療が格段に進歩しています。そのため、発症早期に適切に治療を行えば関節破壊の阻止が可能になってきています。
関節リウマチ 症状
関節リウマチ 初期症状
初期症状として、典型的には「朝に手がこわばる」「手の指が痛い」「手の指が腫れる」という症状から発症します。朝のこわばりは30分以上持続することが多いです。
Lancet 2017; 389: 2338–48より引用
手の指以外にも、手首、肘、肩、膝、足などの全身の関節に「痛み」や「腫れ」が出ます。
関節の変形
関節の炎症が持続すると、徐々に関節が破壊され変形してしまいます。変形してしまうと、関節の可動域が制限されるなど日常生活に支障を来してしまうこともあります。
関節破壊は、以下の図のように関節リウマチが発症した後の2年以内に出現することが多く、この2年間の間に急速に進行することが知られています。これが、関節リウマチは早期診断早期治療が重要といわれている理由です。
「メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」より引用
関節外の症状、合併症
関節リウマチは、関節以外の臓器も障害することがあります。比較的頻度が多いものとして、以下があります。
間質性肺炎
目の病変
リウマトイド結節
心血管疾患
慢性腎臓病
骨粗鬆症
甲状腺疾患(橋本病など)
シェーグレン症候群
関節リウマチの症状と合併症に関してより詳しく知りたい方は、以下をご参照頂けますと幸いです。
関節リウマチの原因
様々な原因が考えられていますが、特に遺伝と生活習慣が関節リウマチの発症の影響することが知られています。
遺伝に関しては、血縁の家族が関節リウマチの場合は発症する可能性が上昇しますが、必ずしも発症するわけではありません。
生活習慣に関しては喫煙や歯周病がある方は関節リウマチを発症しやすいことが知られています。そのため血縁の家族で関節リウマチの方がいる場合は、特に禁煙や歯周病対策が重要です。
また肥満(BMI25以上)は関節リウマチ発症の危険因子であると報告されているので、血縁の家族で関節リウマチの方がいて肥満の場合は減量することが重要です。
関節リウマチの検査
関節リウマチが疑われる患者さんでは、診断の確定や合併症の有無の確認のため、主に以下の検査を行います。
血液検査
血液検査は、関節リウマチの診断の助けになるリウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体、炎症の程度を調べるCRPに加えて、初診時には関節リウマチ以外の関節痛の原因疾患を調べるための項目も検査します。
また、下記の免疫を抑える薬剤を使用して良いかの確認としてB型肝炎、C型肝炎、結核などの感染症の血液検査を行います。
レントゲン
手のレントゲン検査では関節の変形がないかを、胸部レントゲンで肺に病気をお持ちでないかを確認します。
関節超音波検査(関節エコー検査)
関節エコー検査は、関節の腫脹の状態、炎症の状態をリアルタイムに観察します。
骨密度検査
骨折の原因になる骨粗鬆症を合併する頻度が多いため、関節リウマチと診断された際には骨密度を調べることも重要です。
これらの検査は関節リウマチの治療中にも定期的に行い、その変化を評価していきます。
関節リウマチの検査に関してより詳しく知りたい方は、以下をご参照頂けますと幸いです。
関節リウマチの診断
関節が痛くなる(関節痛)原因、関節が炎症(関節炎)する原因は多岐に渡りますが、問診、身体診察、採血、レントゲン、関節超音波検査などを組み合わせることで大半の患者さんは正確に診断することが可能です。
診断基準(分類基準)は、以下の項目で合計6点以上であれば関節リウマチと診断するということが、海外の学会より提唱されています。
項目 | 点数 |
---|---|
診察で腫脹または圧痛のある関節の数 (0-5点) | 1つの中~大関節 (0点) 2-10の中~大関節 (1点) 1-3の小関節 (2点) 4-10の小関節 (3点) >10の関節 (小関節1つ以上) (5点) |
血清検査 自己抗体(0-3点) | RFと抗CCP抗体の両方が陰性 (0点) RF か抗CCP抗体のいずれが弱陽性 (2点) RF か抗CCP抗体のいずれが強陽性 (3点) |
血液検査 炎症反応 (0-1点) |
CRPとESRの両方が正常 (0点) |
症状の期間 (0-1点) | <6週 (0点) ≥6週 (1点) |
ただし、関節リウマチ以外の疾患でも上記の基準を満たしてしまうことがあります。また、関節リウマチの発症早期には上記の基準を満たさない場合があり、その場合でも治療の開始が必要なことも多いです。
初診時には診断を確定させられず、経過を見ていかないと診断が難しい患者さんもいるため、関節リウマチを発症しやすい年齢か、関節の炎症のある部位はどこか、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体が陽性か、そのほかの疾患の可能性はないか、などを総合的に判断して診断をします。
関節リウマチ以外で関節に炎症が起こる病気ですが、下記が知られています。
「日本リウマチ学会 新基準使用時のRA鑑別疾患難易度別リスト」より引用
このように関節リウマチと似た症状で起こる病気は多岐に渡り、中には診断が難しい疾患もあるため正確な診断のためにはリウマチ専門医による評価が好ましいと考えています。
検査入院を含め総合病院での精査が好ましい、当院でも診断が難しいと判断した場合には、近隣の総合病院のリウマチ/膠原病科にご紹介をさせていただきます。
関節リウマチの疾患活動性
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関節リウマチの治療
発症から3ヶ月以内では治療が効きやすく、より少ない薬の量で寛解を達成することが可能です。そのため、発症早期に専門医に受診することが重要と考えられています。
関節リウマチ診療ガイドライン2024では、以下のように治療を進めることが推奨されています。
関節リウマチ診療ガイドライン2024改定より引用
要約しますと、薬剤の第一選択は「メトトレキサート(MTX)」の使用を基本に考えます。治療開始初期には、補助的治療として「ステロイド」「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」の使用を検討します。
「メトトレキサート」を開始、増量した上で3-6ヶ月間経過を見て、関節リウマチの疾患活動性が残っている場合には「その他のリウマチ薬(csDMARD)」や「生物学的製剤(bDMARD)」、「JAK阻害薬(JAKi)」を追加します。
以下で、各薬剤についてご説明させて頂きます。
ステロイド
ステロイドは即効性が高く関節リウマチの炎症を速やかに抑えることが期待できるので、治療初期に用いられることが多い薬剤です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDSは、痛みなどの症状改善の他に、関節の炎症を抑える効果が期待できます。
ただし関節リウマチの関節の変形を予防する効果や免疫の異常を改善する効果はないと考えられているので、治療初期に他の薬剤と併用しつつ、必要最小限に使用します。
メトトレキサート(MTX)
ガイドラインのアルゴリズムでも「関節リウマチと診断された場合にはまずメトトレキサートを考慮」となっているように、使用できる患者さんにおいてはまず使用するべき薬剤です。
効果が出てくるのが比較的早く(4~8週間以内)、使い方を間違えなければ安全性も高いため関節リウマチの中心的な薬剤となっており、「アンカードラッグ」と呼ばれています。
メトトレキサートに関してより詳しく知りたい方は以下をご参照頂けますと幸いです。
生物学的製剤(bDMARD)
メトトレキサートで効果が不十分、もしくはメトトレキサートが使用出来ない患者さんで疾患活動性が高い場合に、使用が検討されます。
生物学的製剤の中でTNF阻害薬、IL-6受容体阻害薬、T細胞共刺激経路阻害薬に分類され、いずれの薬剤も有効性は同等であると報告されています。
皮下注射ないしは点滴で投与するという選択肢がありますが、同等の効果が見込めること、クリニックの滞在時間が長くなってしまうことより、当院では皮下注射のみ対応致します。
生物学的製剤に関してより詳しく知りたい方は、以下をご参照頂けますと幸いです。
JAK阻害薬(JAKi)
生物学的製剤と同等の効果が見込め、内服製剤のため注射しなくて良いのが特徴の薬剤です。
しかしながら、現状では長期安全性が十分確認できていないことより、ガイドラインでは生物学的製剤(bDMARD)を優先することが勧められています。
そのため生物学的製剤で効果不十分の患者さんで、使用することが検討されます。
その他のリウマチ薬(csDMARD)
その他のリウマチ薬「サラゾスルファピリジン」「イグラチモド」などがあり、以下のような患者さんで選択肢となります。
・メトトレキサートが使いづらい
・メトトレキサートで効果不十分だが、生物学的製剤は使いづらい
・生物学的製剤を使用して効果があるが、もう少し疾患活動性を抑えたい
関節リウマチの治療に関してより詳しく知りたい方は、以下をご参照頂けますと幸いです。
体調不良時の対応(シックデイ)
風邪やインフルエンザ、熱や下痢・嘔吐などで食事ができないなど、体調の悪い時には慎重な対応が必要です。
体調不良時には以下の対応が必要で、事前に把握してくことが好ましいです。
ステロイドは中止しない
ステロイドを急に中止すると、「副腎不全」という非常に重篤な状態になり、意識障害や血圧低下などの症状が出てしまうことがあります。体調悪化時にも、必ず継続する必要があります。
ステロイド以外のリウマチ薬(特にメトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害薬)は中止する
体調不良の原因が感染症であった場合、リウマチ薬を継続することにより体の免疫が弱くなり、感染症が重症化しやすくなってしまいます。これらの薬剤を1週間程度休薬しても関節リウマチが急に悪化する可能性は低いため、体調悪化時には中止することが好ましいです。
医療機関への連絡、受診をためらわない
関節リウマチで治療中の患者さんは免疫を抑える薬を使用しているため感染症が重症化してしまう危険性が高いです。上述したことが基本ではありますが、迷う場合も多々あるかと思います。そのため、体調不良時には早めに医療機関に連絡、受診し指示を仰ぐのが安全です。
日常生活の注意点
リハビリテーション
感染症の予防
現在準備中です
いかがでしたでしょうか。
関節リウマチは、専門医による早期診断早期治療が重要な病気です。
東海エリア、名古屋で関節リウマチ専門医の外来をお探しであれば、是非金山駅前の当院への受診をご検討ください。
参考文献:関節リウマチ診療ガイドライン2024
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(リウマチ専門医、指導医)