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検尿異常

検尿異常とは

検尿異常とは、健康診断などで尿検査を行い「尿蛋白」「尿潜血」などが検出されることを指します。尿検査を行うとそのほか様々な項目の結果が返ってきますが、特にこの2つが重要ですので、ご自身の目でご確認頂くのが良いと思います。

検尿の意義、必要性

慢性腎臓病の診断には尿検査と血清クレアチニン値の測定が必要です。この病気は自覚症状が出にくいため、定期的な尿検査が欠かせません。例えば血清クレアチニン値に問題がなくても、蛋白尿が出ている場合には腎臓が悪くなりやすく透析になりやすいことも知られております。また、蛋白尿が持続的に出ていると心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がってしまうことも知られています。

そのため、早期に腎臓内科専門医が評価を行い適切な対応をする事が必要です。

また、尿検査は泌尿器疾患の発見や治療効果の判断にも役立ちます。簡便かつ重要な検査ですので、自覚症状のない人でも年に1回は受けることが推奨されています。

蛋白尿(タンパク尿)

蛋白尿についての概要

健康診断で蛋白尿が陽性と指摘されたときにどのようにすればよいか、腎臓内科専門医より解説します。

蛋白尿とは、腎臓の異常で尿中に蛋白質が漏れ出る状態のことを言います。

この尿蛋白が多い状態が持続している患者さんは、将来の透析、心臓病、脳卒中のリスクが上昇することがわかっていますので、発見次第適切に対応していくことが必要になります。

蛋白尿は将来の透析、心臓病、脳卒中のリスク

健康診断ではまずは尿定性検査という簡易検査を行っています。

尿定性検査結果は、マイナスが正常で、尿中のタンパク量が増えるにつれて±、1+、2+、3+、4+という形で表示されます。1+以上は異常とされており、ガイドラインでは1+以上の方は医療機関への受診を推奨しております。

医療機関に受診されましたら、「尿蛋白定量」という検査で、実際に尿中に何gの蛋白が漏れているかの評価を行います。

その上で、尿定性2+以上、1日に0.5g/日以上の尿蛋白が検出される場合には腎臓内科専門医への紹介が推奨されています。

1日の尿蛋白が0.5g未満かつ尿潜血が検出されない場合には、経過観察可能となります。

蛋白尿は腎臓専門医へ

引用:日腎会誌 2017;59(2):38‒42.

腎臓内科専門医に受診されましたら、蛋白尿が漏れてしまっている原因を調べていきます。

具体的には、高血圧や糖尿病の病気を持っていないか、腎臓病の病気を持っている血縁者がいないかを伺います。

身体診察では聴診で心臓や肺の病気がないか、むくみがないかを確認します。

検査としては、尿潜血が検出されていないか、採血で血液疾患や膠原病がないかの検査を行っていきます。こちらの特殊検査に関しては、結果が出るまでに1週間ほどお時間がかかります。

また、腎臓の形態を確認するために超音波検査を行います。この超音波検査は受診当日に行うことができます。

上記の検査の結果から、尿蛋白の原因が何であるかを推定していきます。ここまでの検査結果から尿蛋白の原因の推定を行いますが、多くの場合確定することはできません。そのため、診断を確定するために腎生検の検査をご提案させて頂く場合があります。

様々なデータから原因を推定することはできるが、原因の確定には腎生検が必要なことが多い

腎生検を行うことにより殆どの症例で尿蛋白の原因が確定できますが、腎生検を行うリスクもありますので、検査を行うメリット、デメリットをよく検討した上でご説明させていただき、実際に検査を行うかどうかは患者さんの希望に沿っていく形なります。以下に、代表的な尿蛋白の原因となる疾患を記載します。

尿蛋白が出る主な原因疾患

  • 糖尿病
  • IgA腎症
  • 膜性腎症
  • 微小変化型ネフローゼ症候群

その他にも原因になる疾患は珍しい病気も含め多数あります、詳しくはかかりつけの専門医にご相談してください

尿蛋白の治療

前述の通り、尿蛋白が1日に0.5g/日未満の場合には多くの場合経過観察で問題ありません。

0.5g/日以上の蛋白尿が出ている場合には、原因疾患が特定できればそれぞれの疾患の治療を行っていきます。

原因が明らかでない場合には、高血圧治療薬である「RAS阻害薬」を用いることがあります。この薬剤には、血圧を下げることの他に尿蛋白を減らす効果があります。尿蛋白が出ていると、それ自体で心臓病や脳卒中のリスクが増えてしまうというデータがありますので、こちらの薬を使用するメリットがあると判断される患者さんに関しては内服をおすすめさせて頂きます。

 

尿潜血(血尿)

検尿異常として尿潜血が認められた場合には、以下のアルゴリズムに沿って検査を進めていくことが推奨されております。

具体的には、さらに詳しい尿検査(尿沈渣、尿細胞診)、血液検査、腹部超音波検査を用いて、泌尿器科医が診療した方が良い病気か、腎臓内科医が診療した方が良い病気かを判断していきます。

蛋白尿を認めず、尿沈渣で腎臓病が疑われる所見がなく、採血で腎臓の機能に問題がないような場合には泌尿器科領域の疾患(膀胱や尿管の異常)の可能性が上がりますので、泌尿器専門医にご紹介をさせて頂きます。

血尿診断ガイドライン2023より引用

 

検尿異常(蛋白尿、尿潜血)を指摘された方へ

病院に行くのは何か病気が見つかってしまうかもしれず「不安」、「時間が取れない」など、病院に行きたくない理由は人それぞれあるかと思います。

腎臓内科医として勤務してきて、健康診断で検尿異常は指摘されていたけど「特に困っていないから受診しなかった」というような方が、透析が必要な状態で緊急受診されるという経験も数多くしてきました。

学会としても尿検査が行き渡っていないこと、尿検査で異常があっても医療機関を受診できていないことを問題視しているようで、様々な広報活動が行われております。

いかがでしたでしょうか。詳しい検査を行うべきかどうかは、基本的には採血と尿検査という簡単な検査で判断が可能です。もしご自宅の近くに 腎臓内科専門医がいる医療機関がないようでしたら、東海圏、名古屋であれば当院への受診をご検討ください。

 

以下の資料でも、尿検査の重要性、検尿異常があった場合には医療機関に受診する重要性を注意喚起しております。一読をお勧めいたします。

放っとかないでたんぱく尿.pdf  

この記事の執筆担当者:中村嘉宏(腎臓内科専門医、指導医、評議員)

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