喘息(気管支喘息)
喘息とは
喘息の正式な病名は「気管支喘息」で、気道の慢性炎症により気道が狭くなり、息苦しさなどの異常を呈する病気です。
気管支喘息は日本の全人口のの7.5%と言うデータもあり、比較的頻度の多い病気です。
子供では乳児期に発症することが多いことが知られています。子供の時に喘息であった人が大人になっても喘息に罹患していると言うケースが多いですが、成人になって初めて喘息になることも多いことが分かっています。
喘息 原因
喘息は、「アトピー型」と「非アトピー型」に分けられます。
小児に発症する喘息に関しては、大半が「アトピー型」であることが知られており、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を合併する頻度が高いです。
「アトピー型」の喘息ではダニ、ハウスダスト、ペット、花粉などで喘息の症状が悪化することが知られています。
成人になった後に初めて喘息を発症する場合には、「非アトピー型」の方が多いとされていますが、「アトピー型」であることも珍しくありません。
喘息 症状
典型的な喘息の症状としては、咳、息苦しさ、喘鳴(呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする)が見られます。
夜間や早朝に悪化する傾向があり、風邪、天候の変化、大気汚染、喫煙などで症状が出やすくなります。
喘息 検査
喘息には、糖尿病のような明確な診断基準は存在しません。さらに肺気腫や心不全など喘息と似たような症状を起こすために紛らわしい疾患も多数あります。
そのため、以下の検査を組み合わせて喘息以外の疾患の可能性を検討することが重要です。
採血(好酸球の上昇を確認)
胸部レントゲン
呼吸機能検査
呼気中一酸化炭素濃度
胸部CT
喘息 合併症
喘息の患者さんは、以下のような様々な疾患を合併しやすいことがわかっています。喘息の症状の悪化や、重症化の原因になる疾患もあり、喘息患者さんでは併存症の確認、管理も重要です。
アトピー性皮膚炎
喘息の患者さんでアトピー性皮膚炎を合併している場合は、ほとんどの原因は「アトピー性喘息」ということが知られています。
重症の方では、喘息とアトピー性皮膚炎の両方に効果がある生物学的製剤である「デュピルマブ」が使用されることがあります。
アレルギー性鼻炎
喘息の患者さんの半数以上で合併していると考えられています。アレルギー性鼻炎があると喘息の重症度が高いことが知られており、鼻炎に対して適切に治療を行うことが重要です。
肥満
喘息の患者さんは肥満(BMI≧25kg/m²)を合併しやすく、また肥満があると喘息発作の頻度や重症度が高くなることが知られています。そのため、肥満の場合は減量が重要になります。
肺気腫(COPD)
喘息と診断されている患者さんで肺気腫を合併することは珍しくありません。肺気腫を合併してしまう患者さんの多くは喫煙者ですので、喘息患者さんでは特に禁煙が重要です。
睡眠障害
喘息ではの患者さんは睡眠障害を合併しやすいことが知られています。喘息のコントロールが不良の場合には、夜間に咳や息苦しさが生じることにより睡眠障害が起きます。また、睡眠時無呼吸症候群を合併しやすいことも知られております。
胃食道逆流症
喘息の存在により胃食道逆流症の症状が悪化することが知られています。一方、胃食道逆流症により胃酸が逆流することに関連して喘息の症状が悪化することが知られています。そのため、胃食道逆流症の治療としてプロトンポンプ阻害薬が使用されることがあります。
鼻ポリープ
成人発症の喘息で、治療が効きづらい喘息の場合には鼻ポリープが合併していることがしばしばあります。そのため、喘息の治りが悪い場合には鼻腔を観察する必要があります。
好酸球性副鼻腔炎
喘息 治療
気管支喘息の治療の主な目標は、喘息発作を起こさないことと、呼吸の機能が低下することを防ぐ(正常なレベルに維持する)ことになります。
治療は、息苦しさが生じている「発作時」と、そうでない「非発作時」に分けて考えます。
喘息の悪化要因である喫煙や受動喫煙を避けることや、過労など悪化要因を避けることが重要です。
また「アトピー型」の喘息の場合にはダニ、ハウスダスト、ペット、花粉などのアレルゲンの回避が重要です。
喘息 発作時の治療
発作時は、重症度に応じて治療が変わってきます。
重症度に応じて短時間作用性β刺激薬吸入、ステロイド点滴、ボスミン皮下注射などを組み合わせて治療を行います。
重症の場合は、入院して酸素吸入を行いながらの治療が必要です。
喘息 非発作時の治療
非発作時の治療に関しても、喘息発作の頻度や重症度に応じて治療を調整していきます。
治療には様々な種類の吸入薬を使用しますが、特に炎症を抑える「ステロイド吸入薬」が治療の中心になります。
そのほか「長時間作用性β刺激薬吸入薬」「吸入抗コリン薬」があり、これらを組み合わせた合剤を使用します。
上記の薬剤で改善しない「難治性喘息」の場合には「生物学的製剤」の使用が検討されます。
参考文献:喘息予防管理ガイドライン2018
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(総合内科専門医)