関節リウマチ 症状と合併症
関節リウマチ 症状
関節リウマチ 初期症状
初期症状として、典型的には「朝に手がこわばる」「手の指が痛い」「手の指が腫れる」という症状から発症します。
朝のこわばりは30分以上持続することが多いです。また、天気が悪いときに関節の症状の悪化を自覚することも多いです。
「だるい」「疲れやすい」「微熱」「食欲が落ちた」という全身の症状も見られることがあります。
手の指は、以下の下の左の図のように腫れるのが典型的です。
その他にも、手首、足首、膝、肘、肩、首などの全身の関節に「痛み」や「腫れ」が出ます。
手の指が腫れているかを評価するために、下の右の図のように関節を前後左右から軽く押して診察します。
Lancet 2017; 389: 2338–48より引用
手の指の中で、特にPIP(近位指節間)関節とMCP(中手指節)関節に炎症が起こりやすいのが特徴です。
一方、 DIP(遠位指節間)関節に炎症は生じにくいことがわかっており、ここに症状がある場合には変形性手関節症、乾癬性関節炎などの別の病が疑われます。
「メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」より引用
関節の変形
関節の炎症が持続すると、徐々に関節が破壊され変形してしまいます。変形してしまうと、関節の可動域が制限されるなど日常生活に支障を来してしまうこともあります。
関節破壊は、以下の図のように関節リウマチが発症した後の2年以内に出現することが多く、この2年間の間に急速に進行することが知られています。これが、関節リウマチは早期診断早期治療が重要といわれている理由です。
「メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」より引用
変形が進行してしまうと、以下のように手足などにさまざまな関節で高度の変形を起こしてしまうことがあります。
「メディカルスタッフのための ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」より引用
関節リウマチ 合併症
関節リウマチは、関節以外の臓器も障害することがあります。比較的頻度が多いものとして、以下があります。
間質性肺炎
肺が障害され、進行すると呼吸苦などが生じます。悪化してしまうと命に関わることもあるので、聴診で肺の音を聞いたりレントゲンで病変がないことを確認することで、早期の発見をすることが重要です。
目の病変
稀ではありますが、「上強膜炎・強膜炎」という病気を合併し、目の白目の充血や目の痛みを認めることがあります。症状出現時には眼科に受診して頂きます。
リウマトイド結節
皮膚の下にしこりを触れる「皮下結節」ができることがあり、肘の外側の部位や、後頭部にできることが多いです。
心血管疾患
関節リウマチの方は、関節リウマチではない方と比べて心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な心血管疾患を2倍発症しやすいことがわかっています。特に、関節リウマチの活動性が高い人で心血管疾患を起こしやすいことが報告されています。そのため、心臓超音波、頸動脈超音波、血圧脈波(ABI)検査を実施することが検討されます。
この理由として、リウマチによる体内での炎症により動脈硬化が進むことが考えられています。そのため、リウマチの活動性を治療によりしっかり抑えておくことが重要です。
また関節リウマチ患者さんは肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併する頻度が高いため、これらを定期に検査することと、必要に応じて治療を行うことが重要です。
慢性腎臓病
関節リウマチの患者さんは、そうでない患者さんと比較して慢性腎臓病を合併しやすいことが知られています。そのため初診時や通院中に、採血(eGFR、クレアチニン)や尿検査で腎臓の状態を確認します。
腎機能が悪化すると、使用できるリウマチ薬も限られてしまうため、腎臓内科にも受診しできる限り腎機能を保持していくことが重要です。
骨粗鬆症
関節リウマチの患者さんは、骨粗鬆症を合併することが多く、骨折リスクが高いことが知られています。そのため、定期的に骨密度検査を実施することが重要です。
甲状腺疾患
関節リウマチは「橋本病」という甲状腺の機能が低下する疾患を合併しやすいことが知られています。また、この「橋本病」は関節痛の原因となることがあります。
そのため関節リウマチが疑われる際には、初診時に血液検査で「TSH」「FT4」という甲状腺の検査を実施します。
シェーグレン症候群
膠原病の中の一つで、目や口の渇きという症状から発症することが多い病気です。関節リウマチの患者さんの約20%でシェーグレン症候群を合併するという報告もあり、頻度の高い合併症です。
シェーグレン症候群の合併を確認するために、関節リウマチが疑われた際には初診時に血液検査で「抗核抗体」「SS-A抗体」という膠原病の検査を実施します。
参考文献:関節リウマチ診療ガイドライン2024
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(リウマチ専門医、指導医)