メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪が蓄積しており、さらに高血圧、高血糖(糖尿病)脂質異常症という生活習慣病を伴っている状態のことを言います。それぞれが動脈硬化、心血管病の危険因子ですが、それが重積した状態と言えます。
内臓脂肪は、皮下脂肪と比べて体内で炎症を起こしやすいことも知られており、それが動脈硬化に繋がる原因の一つと考えられています。
日本国内では男女ともに増加傾向ですが特に男性で多く、20才以上の男性の30%程度がメタボリックシンドロームで、予備軍も含めると約50%程度がタボリックシンドロームであるというデータが公表されています。
メタボリックシンドロームが増えている原因として、食生活の欧米化や生活習慣の乱れが深く関わっていると考えられています。
メタボリックシンドロームのことを「メタボ」と略して呼ばれることがあります。
メタボリックシンドローム 診断基準
メタボリックシンドロームの診断基準ですが、必須項目として内臓脂肪の蓄積があります。
定義は以下の通りです。
⚫️内臓脂肪蓄積: ウエスト周囲長 男性≧85cm、女性≧90cm(内臓脂肪面積 男<もと>100cm²に相当)
内臓脂肪の蓄積は、ウエストの周囲径と相関するため、ウエスト径を測定して評価します。ウエスト径は立位、軽い呼吸をした状態(息を止めたり深呼吸はしない)で、臍の高さで測定します。
CTスキャンで内臓脂肪量の測定を行うという方法もあり、被曝の問題がありますがより正確に内臓脂肪量を把握することができます。
内臓脂肪蓄積の蓄積に加え、以下の3項目のうち2項目以上を満たすものをメタボリックシンドロームと診断されます。
⚫️脂質異常:トリグリセライド値≧150mg/dL かつ/または HDL-C値<40mg/dL(男<または>女)
⚫️血圧高値:収縮期血圧≧130mmHg かつ/または 拡張期血圧≧85mmHg
⚫️高血糖:空腹時血糖値≧110mg/dL
メタボリックシンドロームと診断された場合には、糖尿病を合併していることが多いため糖負荷試験を実施することもあります。
メタボロームシンドロームの患者さんは肥満(BMI25kg/m²以上)の状態のことが多いですが、メタボロームシンドロームの診断基準にはBMIは含まれていません。
肥満症診療ガイドライン2022では、メタボロームシンドロームと肥満症の関係を以下のように示しています。
肥満症診療ガイドライン2022より引用
メタボリックシンドローム 原因
内臓脂肪の過剰な蓄積により、メタボリックシンドロームの基準にある血糖、血圧、脂質などに悪影響が出ることが分かっています。
内臓脂肪が過剰に蓄積する原因としては運動不足や、カロリー摂取過多(食べ過ぎ)が主な原因ですが、遺伝的要因も影響していると考えられています。喫煙者がメタボリックシンドロームになりやすいことも知られています。
メタボリックシンドローム 合併症
高血圧、糖尿病、脂質異常症、心血管病の他に高尿酸血症、慢性腎臓病、非アルコール性脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群も合併しやすいことが知られています。
また、メタボリックシンドロームの状態が持続すると、脳梗塞や心筋梗塞などの生命の危機を伴う疾患を発症してしまう危険性が上昇します。
メタボリックシンドローム 治療
上述のようにメタボリックシンドロームの状態が持続すると、脳梗塞や心筋梗塞などの危険性が上昇してしまうため、適切に対応すことが必要です。
具体的な治療としては、食事療法、運動療法などの生活習慣改善により、体重および内臓脂肪を減少させることが重要で、具体的にはその時点での体重から3%以上減量することが目標になります。
具体的な対応に関しては、肥満症の治療とほとんど同じです。
運動療法
・有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)を中心に行い、レジスタンス運動(スクワットや腕立て伏せなど)の併用も望ましい。
・軽~中強度の運動を1日30分以上行い、週150分以上確保する。
詳しくは以下をご参照ください。
食事療法
1日の摂取エネルギー量の算定基準は25 kcal × 目標体重(kg)以下にすることが推奨されています。
詳しくは以下をご参照ください。
上記の他に、喫煙者は禁煙することも重要です。
飲酒に関しては「適度な飲酒」が勧められております。具体的には、男性は純アルコールで1日平均約20gまで、女性や高齢者はそれより少ない量(一つの目安として10g まで)に抑えることが勧められています。
減量により内臓脂肪が減少することで、高血圧、高血糖(糖尿病)脂質異常症の改善が期待できます。
減量しても上記の疾患の改善が得られない場合には、それぞれの疾患に対して薬物治療などを検討します。
いかがでしたでしょうか。名古屋市でメタボリックシンドロームでの外来受診をお考えであれば、金山駅前の当院への受診をご検討ください。
参考文献:肥満症診療ガイドライン2022、健康日本21
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(総合内科専門医)