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慢性腎臓病

腎臓とは ~腎臓の働き~

腎臓は、お腹で左右に2つある臓器で、図のような位置にあります。

形が似ているので、そら豆に例えられたりすることがあります。

腎臓はさまざまな働きがありますが、尿を作ることにより体の外に水分や老廃物を出すという役割があります。

また他にも、血圧の調整、骨の強度の維持、赤血球に関わるホルモンを作っています。

 

慢性腎臓病とは

慢性腎臓病は、以下のいずれかが3ヶ月以上続く状態と定義されております。

●蛋白尿などの検尿異常

●血液検査でeGFR60未満(クレアチニンより計算)

慢性腎臓病にこの機能が落ちてしまっている状態です。それにより、体内の老廃物や水分を排泄できなくなったり、重要なホルモンを作れなくなり、全身で様々な異常を起こします。

現在日本には1300万人以上の慢性腎臓病患者さんがおります。これは成人の日本国民の8人に1人に相当する数で、国民病と言って良い状況です。

慢性腎臓病を放置してしまうと脳卒中、心臓病、透析になってしまう危険性が上がるため、健康診断などで定期的に尿検査と血液検査を行い、慢性腎臓病が疑われる場合には早期に医療機関に受診することが重要です。

 

慢性腎臓病の病期(ステージ)分類、重症度分類

病期(ステージ)分類

慢性腎臓病は、eGFRにより1~5のステージに分かれます。

eGFRの値は腎臓の機能を表しており、腎機能に問題がない人は概ね100です(個人差あり)。ですので、例えばeGFR50の患者さんであれば「腎臓の機能は100点満点で50点くらい」と説明させて頂いております。

具体的には、eGFR90以上がステージ1、eGFR60-89がステージ2、eGFR30-59がステージ3、eGFR15-29がステージ4、eGFR15未満がステージ5と表されます。

ステージ3に関しては、下記のようにさらに3a、3bに細かく分類されます。

重症度分類

重症度は、上述の病期分類(G1~5)と尿蛋白(A1~3)の量により評価します。

尿蛋白の詳しい説明に関しては検尿異常をご参照ください。

以下は、腎臓学会が示している慢性腎臓病のヒートマップです。

赤、オレンジ、黄色、緑の順に重症度が分類され、重症度が高いほど死亡、透析、心血管病の発症リスクが高いことが知られています。

CKD診療ガイドライン2023より転載

 

この重症度分類を参考に、以下の場合には腎臓内科専門医への受診が推奨されています。

CKD診療ガイドライン2023より転載

 

慢性腎臓病の症状

初期症状としては足のむくみ(浮腫)が多いですが、慢性腎臓病の病期が進むまで症状が出ない事が大半です。そのためサイレントキラー(沈黙の殺し屋)とも言われており、腎臓の状態は検査をしないとわからないというのが実情です。。

糖尿病が原因である糖尿病性腎症ではステージ3の段階で足のむくみが出てくる事がしばしばありますが、それ以外では慢性腎臓病のステージ4くらいから症状が出てくる事が多いです。

慢性腎臓病による主な症状としては、以下があります。

下腿浮腫(足のむくみ)
倦怠感(なんとなくだるい)
頻尿(特に、夜間にトイレに行く回数が増える)
尿量減少
尿の泡立ち
皮膚の乾燥、かゆみ
吐き気、食欲低下

また、次に説明します慢性腎臓病の合併症として貧血、心臓病、脳卒中があります。

そのため以下のような症状で慢性腎臓病が発見されるケースもありますが、これらの症状を契機に慢性腎臓病と診断される方は、「毎年の健康診断を受けられていなかった」「健康診断で腎臓内科に受診を勧められていたが行けていなかった」という事が多いです。

ふらつき、動悸、めまい(貧血)
胸痛、呼吸苦(心臓)
痺れ、手足の麻痺(脳卒中)

繰り返しになりますが、慢性腎臓病は症状が出にくい病気のため重要性が分かりづらいですが、健康診断などで定期的に尿検査と血液検査を行い、慢性腎臓病が疑われる場合には専門機関に受診することが重要です。

慢性腎臓病の合併症

慢性腎臓病の主な合併症として、以下があります。

高血圧

高血圧は慢性腎臓病の原因としても非常に多いですが、一方慢性腎臓病になると高血圧を発症しやすい、血圧が上昇しやすいです。私が所属している名古屋大学腎臓内科の研究グループのデータでも、進行した(ステージ4以降の)慢性腎臓病の患者さんの9割で高血圧の薬剤を内服しておりました。後述する血圧の適切な管理は慢性腎臓病の悪化を抑えるために極めて重要なため、慢性腎臓病患者さんは定期的に自宅血圧を測定する事が必要な事が多いです。

貧血

慢性腎臓病が進行(ステージ3~4以降)すると、「腎性貧血」と言われる腎臓が原因で貧血になってしまう状態になる事が多いです。赤血球の産生を促進する「エリスロポエチン」というホルモンが腎臓で作られますが、慢性腎臓病になるとこの産生がされづらくなってしまうことが知られています。

心血管疾患

慢性腎臓病のステージが進行するごとに、心筋梗塞、心不全や脳梗塞を発症してしまうリスクが上昇してしまう事がわかっています。また逆に、心不全を起こした患者さんでは腎機能が悪化しやすい事がわかっており、心臓と腎臓には非常に密接な関係があります。

そのため、上述の赤、オレンジ、黄色、緑のヒートマップを参考に、リスクの高い患者さんでは心臓超音波、頸動脈超音波、血圧脈波(ABI)検査を実施することが検討されます。これらの検査は、いずれも体に害がないのが特徴です。

骨粗鬆症、骨折

慢性腎臓病の患者さんは、骨粗鬆症を合併しやすいことが知られており、また腎機能が悪化するほど骨折してしまうリスクが上昇することが知られています。

また、骨粗鬆症患者さんの半数以上は慢性腎臓病を合併していたというデータもあり、両者は極めて密接な関連があることがわかっています。

慢性腎臓病で骨粗鬆症になる理由としてビタミンD不足、体内での老廃物(尿毒素物質)の蓄積などさまざまな理由が報告されています。

特に慢性腎臓病では大腿骨頚部(股関節あたり)の骨折が多く、これにより寝たきりになってしまう方もいらっしゃいます。骨粗鬆症は骨密度検査をしないとわかりませんが、実際には骨粗鬆症と診断されずに骨折してしまうというケースが多いのが実情です。

筋力低下

慢性腎臓病では、筋肉量が減少し筋力も低下することが知られております。我々の研究グループのデータからも慢性腎臓病で筋力が落ちてしまう患者さんは多く、まず下肢の筋肉が落ちて歩行や階段昇降などに支障が出ることが分かっています。

下肢の筋力が低下するため転倒しやすくなり、それも慢性腎臓病患者さんで骨折が多い理由の一つであることが知られています。

「日本腎臓リハビリテーション学会」という腎臓病の患者さんの筋肉、リハビリなどに特化した学会もあり研究が進んできており、慢性腎臓病患者さんにおいては運動することが重要であることが分かってきています。

メンタルヘルス(心)

慢性腎臓病の患者さんは、気分が落ち込む「うつ状態」だけでなく、「うつ病」の状態の人も多いと報告されております。そのため、主治医、医療スタッフ、ご家族の精神面での支えが必要な事がしばしばあります。

「サイコネフロロジー(精神腎臓病)学会」という腎臓病患者さんのメンタルヘルスに特化した学会もあり、こちらも重要な領域です。

その他

代謝性アシドーシス、高カリウム血症、二次性副甲状腺機能亢進症などの採血で分かる異常所見を認める事があり、それぞれについて対応が必要なため定期的に採血で検査を行なっていきます。

また歯周病、虫歯が多いことも知られており、(これは慢性腎臓病の患者さんに限りませんが)定期的な歯科受診も重要です。

慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病の原因となる生活習慣病としては、主に以下が挙げられます。

高血圧
糖尿病
肥満
喫煙

さらに、以下のような原因で慢性腎臓病になることも多いです。

薬剤 (痛み止めであるNSAIDSなど)
糸球体腎炎(IgA腎症、膠原病、血液疾患など)
ネフローゼ症候群(微小変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症など)

慢性腎臓病の原因は非常に多岐に渡るため、年齢、病歴、身体診察、採血、尿、腎臓超音波などを組み合わせて原因を探っていきます。

上記だけでは原因がはっきりしないことも多く、診断を確定させるためには腎生検(腎臓を針で刺す検査)が必要になることもあります。

慢性腎臓病の検査

採血

慢性腎臓病の方では、主に以下を定期的に確認します。

腎機能(クレアチニン、eGFR)、

電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム)

貧血(ヘモグロビン)

また、初診時に腎臓病の原因を突き止めるために、以下の特殊は検査を行う事があります。

膠原病(抗核抗体、補体など)

血液疾患(免疫電気泳動)

尿検査

尿定性、尿蛋白を定期的に確認していきます。

また、初診時に腎臓病の原因を突き止めるために、尿沈渣という尿を実際に目で見て異常がないかを確認します。

腎臓超音波(エコー)

超音波検査(エコー)は、超音波を使うことにより内臓、血管、皮膚など体の様々な部位を観察する事が可能です。痛みはなく、放射線による被曝もないため安全に検査を実施する事が可能です。

腎臓超音波は腎臓病の原因を調べるために重要な検査で、様々な情報を得る事が可能です。主に、以下の点に着目して検査を行います。

腎臓の大きさ、左右差はないか
腎臓の形態に異常はないか
腎臓に結石がないか

 

慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病ですが、一度悪くなると改善することは難しいケースが多いです。

また、加齢によっても年々少しずつ腎機能は悪化します。

そのため、 慢性腎臓病の現実的な目標としては、悪化するスピードを少しでも抑えることになります。

例えば、自覚症状が出るような進行した状態(ステージ4など)で腎臓内科専門医に受診をした場合、そこから悪化スピードを抑えるための治療をしても透析までの期間を少ししか延ばせないのが実情です。

そのため腎機能が保たれている早期の慢性腎臓病の段階で、腎臓内科専門医による診察、管理を受けることが好ましいです。

治療する項目は、禁煙、食事などの生活習慣の改善に加えて、以下のような項目それぞれに対して治療を行います。

いずれも、適切に管理することにより慢性腎臓病の悪化スピードを抑える事ができることが知られています。

高血圧
むくみ(浮腫)
代謝性アシドーシス
高リン血症

シックデイとは 体調不良時に必要な対応

現在準備中です

腎代替療法(透析)について

現在準備中です

 

 

いかがでしたでしょうか。東海エリア、名古屋で腎臓内科専門医の外来をお探しであれば、是非金山駅前の当院への受診をご検討ください。

 

日本腎臓学会が慢性腎臓病の啓発には大変力を入れられており、腎疾患政策研究事業から「もし腎臓が働かなくなったら」「腎臓で後悔したくないあなたへ」という形で、非常わかりやすくまとめて頂いておりますので一読をお勧めいたします。

 

この記事の執筆担当者:中村嘉宏(腎臓内科専門医、指導医、評議員)

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