なぜ血圧を下げる必要があるのか
そもそも、なぜ血圧を下げる必要があるか
高血圧を放置してしまうと、血管が痛み全身の臓器に障害が起きてしまい、その結果心筋梗塞、脳梗塞などの心血管病を起こし、それにより死亡してしまう危険性が上昇します。これを防ぐために、高血圧の患者さんでは血圧を下げることが必要です。
以下は日本国内の約7万人のデータを集計した結果ですが、65才未満(左図)では収縮期血圧が120mmHg以下の人が最も心血管病による死亡リスク(危険性)が最も低いという結果が示されています。さらに、血圧が上がるにつれて心血管病による死亡リスクがどんどん上昇していることが見て取れます。
さらに、75才以上(右図)の方でも血圧が上がるにつれて心血管病による死亡リスクが上昇することが示されています。
高血圧ガイドライン2019より引用
高血圧の死亡への影響
大規模研究の結果より、「心血管病による死亡」に最も影響を与えているのは高血圧であることが示されています。概算では日本で年間に約10万人が高血圧により死亡しているという結果が示されています。
喫煙、糖尿病、脂質異常症、肥満症なども「心血管病による死亡」に影響を与えますが、高血圧の方が影響が強いことが分かります。
高血圧ガイドライン2019より引用
高血圧治療 日本国内の現状
上記のように高血圧による死亡が多い要因として、治療が十分になされていないことが指摘されています。
以下に示すように、高血圧の患者さんは日本国内に4300万人いるとされていますが、そのうち血圧が140/90mmHg以下である患者さんは1200万人のみと推計されています。
3100万人の患者さんは血圧が140/90mmHg以上で管理不十分ですが、そのうち1400万人は自分が高血圧と認識していないとも推計されています。
高血圧ガイドライン2019より引用
高血圧をしっかり治療することは重要なことはわかっており、その治療法も確立されていますがが、一方で
「忙しくて通院できない」
「通院しているけど適切な診療を受けられていない」
というように「実際には必要な治療を受けられていない人が多い」という問題意識を持っています。
血圧の目標値
さまざまな研究結果より、一般的には以下の血圧目標が好ましいと考えられています。
成人:家庭血圧: 130/80 mmHg 未満
高齢者(75歳以上):健康状態が良好であれば、収縮期血圧: 140 mmHg 未満
高齢者でも、忍容性があれば(血圧を下げることによる害がなければ)個別に判断し、130 mmHg 未満を目指す
糖尿病、心疾患、蛋白尿陽性の慢性腎臓病の患者さんでは、収縮期血圧120mmHg未満などさらに血圧を低めにした方が良い場合があり、医師と患者さんで相談しながら個別に目標値を設定していくことが望ましいです。
私は総合病院に紹介頂いた患者さんを診療する中で、そもそも血圧の目標値を医師より言ってもらっていない患者さんが多いと感じておりました。もし主治医より血圧の目標値を言われていないようでしたら、一度確認することをお勧めします。
血圧の目標値に関して、高血圧治療ガイドライン2019では以下のように記載されています。
高血圧治療ガイドライン2019より引用
このように、高血圧に合併する疾患によって血圧の目標値も変わってきますので、必要な検査を定期的に実施することが重要と考えています。
高血圧の合併症と、その検査に関して詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。
現状の医療機関受診勧奨について
健康診断で高血圧を指摘された際の医療機関受診の目安として、高血圧学会からは以下のように記載されております。
● 収縮期血圧≧160mmHg又は拡張期血圧≧100mmHg → すぐに医療機関の受診を
● 140mmHg≦収縮期血圧<160mmHg又は90mmHg≦拡張期血圧<100mmHg → 生活習慣を改善する努力をした上で、1ヶ月以上数値が改善しないなら医療機関の受診を
しかしなら上述のように、特に65才未満の方では収縮期血圧120-139mmHgの間でも「心血管病による死亡」の危険性が上昇することがわかっています。
「健康診断で血圧が高めと指摘されたけど病院に受診していなかった」という方が、重症になってから総合病院に受診されるということを数多く経験して参りました。血圧に関して自己判断は危険ですので、迷う場合にはお近くの医療機関で相談することをお勧めします。
最後に
いかがでしたでしょうか。
血圧目標は患者さん個人の状態によってに変わってくるので、目標値に関して医師と患者さんで共通認識を持つことが重要と考えています。
名古屋市で高血圧での外来受診をお考えであれば、金山駅前の当院への受診をご検討ください。
より詳しく知りたい方は、高血圧学会が出版している以下の冊子が非常に参考になりますので一読をお勧め致します。
・一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子日本高血圧学会https://www.jpnsh.jp › data › jsh2019_gen
引用文献
・特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を日本高血圧学会https://jpnsh.jp › data › 202405-level
この記事の執筆担当者:中村嘉宏(総合内科専門医)