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高血圧性腎硬化症

高血圧性腎硬化症とは

(高血圧性)腎硬化症は「慢性腎臓病」の原因の一つで、高血圧が長年持続する事により腎臓の血管が痛み、腎機能の低下が起きる病気です。

高齢の方に多く、長年(多くは10年以上)の高血圧があり、蛋白尿や血尿などの検尿異常は軽度に止まることが特徴です。

日本人の高齢化に伴い、腎硬化症の患者さんは増加しております。

透析の原因疾患としては糖尿病性腎症が約40%と最も多いですが、腎硬化症は約20%で2番目に多い疾患です。

日本透析医学会 2022 年透析導入患者の動態より引用

 

腎硬化症の患者さんは、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系疾患の発症が多くみられるため、その予防も重要になってきます。

高血圧性腎硬化症の典型的な経過

長年の高血圧がある高齢者で、腎機能はゆっくり悪化するというのが典型的で、透析に至るまで自覚症状に乏しいことが多いです。年齢に関して、我々の研究グループのデータからは、腎硬化症患者さん(eGFR20未満)の平均年齢は75歳という結果が得られております。

尿検査では血尿を認めず、蛋白尿も少ない(通常1g/gcr以下)事が特徴です。また、腎臓の超音波検査では腎臓が萎縮し小さくなることも特徴的な所見です。

高血圧性腎硬化症 診断

腎硬化症の明確な診断基準はありませんが、高血圧歴、腎機能の推移などの採血結果、尿検査、腎臓超音波検査などの結果から総合的に判断して診断します。

通常は上述の典型的な経過の場合に腎硬化症と診断しますが、腎硬化症の患者さんでも蛋白尿が多い場合や、腎機能障害の進行が早い、典型的ではない症例もあります。また、糖尿病性腎症などの他の腎臓病と合併することも珍しくありません。そのため、慢性腎臓病の診療に精通した専門医により診断することが好ましいと考えています。

最も確実に診断をする方法は「腎生検」という腎臓を針で穿刺して組織を取る方法です。その組織を顕微鏡で観察し、最終的な診断を行います。この腎生検は確実に診断ができるための非常に重要な検査方法ですが、「針で穿刺するため大出血などの危険性がある」そのため「入院を要する」などのデメリットがあります。通常腎硬化症が強く疑われる場合には腎生検は実施しませんが、腎硬化症以外の腎臓の病気の可能性も疑われる場合には実施する事があります。

高血圧性腎硬化症 合併症

高血圧性腎硬化症に特有の合併症はなく、慢性腎臓病の合併症と同様です。

合併症の中でも、特に心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系疾患に注意が必要です。そのため心臓超音波、頸動脈超音波、血圧脈波(ABI)検査などで合併症の有無を確認することが、予防のために有用と考えられます。

慢性腎臓病の合併症に関しては以下をご参照ください。

高血圧性腎硬化症 治療

高血圧性腎硬化症に特有の治療はなく、慢性腎臓病の治療と同様です。

高血圧に対して血圧を下げることは重要ですが、特にご高齢の方では血圧を下げすぎる事で腎臓への血流が悪くなり、腎機能が悪化してしまう事があります。腎硬化症は、ご高齢の方に多いので注意が必要です。

CKD診療ガイドライン2023では以下のように、75歳以上の慢性腎臓病の方に関しては収縮期血圧を150mmHg未満にするという形で、血圧を下げすぎないことが推奨されています。

CKD診療ガイドライン2023

 

慢性腎臓病の治療に関しては以下をご参照ください。

 

高血圧性腎硬化症 予防

腎硬化症の患者さんの多くは現役世代のうちに高血圧を発症しています。この高血圧を発症して腎臓に異常がない段階で、しっかりと血圧を下げておく事が高血圧性腎硬化症の予防になると考えられます。

慢性腎臓病がない場合には、血圧の目標値は以下が好ましいと考えられています。

成人:家庭血圧: 130/80 mmHg 未満
高齢者(75歳以上):健康状態が良好であれば、収縮期血圧: 140 mmHg 未満
忍容性があれば個別に判断し、130 mmHg 未満を目指す

高血圧を発症した段階から毎日血圧を測定し、上記の血圧を目標に治療を行っていく事が、腎臓を含めた全身の血管を守るために重要と考えています。

 

高血圧に関しては、以下をご参照ください。

 

 

いかがでしたでしょうか。

高血圧性腎硬化症による慢性腎臓病の患者さんは、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病を起こしてしまうリスクが高く、重症化する前に検査をして予防する事が重要と考えています。

また高血圧性腎硬化症になってしまう前に、高血圧の段階でしっかりと血圧をコントロールする事が、腎臓を含めた全身の血管を守るために重要と考えています。

東海エリア、名古屋で高血圧、慢性腎臓病の治療を検討されている場合は、金山駅前の当院への受診をご検討ください。

 

参考資料:CKD診療ガイド2024、CKD 診療ガイドライン 2023

この記事の執筆担当者:中村嘉宏(腎臓内科専門医、指導医、評議員)

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